そして、曲は続き、物語が展開してゆく。
ロボットは油さえさせば、インフルエンザにも罹らず、心痛めることも、考えることもない。 自覚していたわけではないが、幸せに生きていた。
でもある日、一輪のマーガレットが彼の平和な生活に混乱をもたらした。
特に何をしたわけでもなく、良い香りを放った、ただそれだけなのだが。
「花なんか何の役に立つのだろう?」とロボットは自問して、それを解決するために金属アームを動かして、花弁を一枚引き抜き、自分のらせん状の器官の中に押し込んだ。
・・・・さて、ここからロボットに異変が起こるのだが。
ロボットはぼんやりとして、今までのように有能に仕事をこなせなくなる。
へまばかりして、更にマーガレットの花弁を全部食べてしまい、ついには故障して倒れ動かなくなる。 恋に死んだということを自分では知らずに。
・・・・大雑把な説明だが、このような内容の歌なのだ。
わかるようで結構謎。 可愛いようで結構シュール。シャンソンぽい洒脱な味わいを感じる。
もう少し具体的に見ながら、いくつかの興味深い点を取り上げてみたい。
まず、ロボットが壊れてゆく場面の描写から。
Adieu le travail bien fait il enclenchait, d’un air distrait
faisait bouillir le courrier ou bien il épluchait bébé
(よくできる仕事にさよなら ぼんやりした様子で動き始める
手紙を煮込んでしまう 赤ちゃんの皮をむく )
ロボットが壊れ始めたのはわかるけれど、かなり怖い。
何気なく歌っているけど、「本当は怖いグリム童話」みたいにゾゾ〜と背筋が寒くなる。冒頭のepluchaint(皮をむく)はたぶんフライドポテト用のジャガイモの皮むきなのだろうけれど、なにもこれをbe´be´(赤ちゃん)と組み合わせなくても・・・こう言っては偏見かもしれないが、・・・・フランスぽいと思ってしまう。
二つ目の注目点。
ロボットがマーガレットの花弁を全部食べてしまう場面で、
歌詞に、「彼は“passoionnément”と言い 突然故障して倒れた」というフレーズが出てくるのだが、“passoionnément”は「情熱的に・熱烈に」という意味であり、ではどういうことなのか? 解釈上ここにも一つ、謎がある。
・・・・これはおそらく、“effeuiller la marguerite”、(花占い)のことではないかと思われるのだが。
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