「チョコ娘 」   

初出ブログへ 2017-02-11

 チョコレートって、何となく夢があって、人ごみに混ざってあれやこれやと美しいチョコレートを眺めるのは嫌いではありません。  

 今日はそんなバレンタインデーを前に、『チョコ娘』という曲を取り上げてみたいと思います。

 

 

Olivia Ruiz

 「La femme chocolat(ラ・ファム・ショコラ)」
 直訳すると『チョコレート女』という奇妙なタイトルが付いたこの曲は、オリヴィア・ルイーズ(Olivia Ruiz)のセカンドアルバム『chocolat』(2005年)に収録された曲である。

 2014 年2月に開催した「訳詞コンサートvol.7『君は誰にも似ていない』」で、私は、新進気鋭のシンガーソングライターとして,ケレン・アンと、そしてこのオリヴィア・ルイーズの二人を取り上げたのだが、その後も彼女は、独創的で魅力溢れる楽曲を次々と創り上げながら、精力的にアルバム制作、コンサート活動を行っており、「ヌーベル・セーヌ(nouvelle scene)」と呼ばれる新たな音楽界の旗手としてその才能を発揮している。

 彼女は、1980年に、フランス南部カルカソンヌで生れている。
 父親はスペインの民族音楽を伝える音楽家で、そのライヴを聴きながら幼少時代を過ごしたという。
 12歳の時、初めて父とステージを共にして以来、フランスとスペインの楽曲の融合を図る新たな試みにも積極的に取り組んでいる。
 
 2001年、アイドル歌手としてスタートした彼女だが、2006年にこのセカンドアルバムが発表されると、フランスのみならずヨーロッパ全土で100万枚を超える売り上げを記録し、2007年には、ヴィクトール賞など栄誉ある賞を数多く得ている。

 彼女の持ち味である、スペイン系の血を感じさせる大らかでエキゾチックな声質と表現力とが遺憾なく発揮されている原曲をまずは、紹介してみたい。

 

 


 

 

 

 『チョコ娘』
 原曲はこのように始まる。(直訳 松峰)

Taille-moi les hanches à la hache
J'ai trop mangé de chocolat
Croque moi la peau, s'il-te-plaît
Croque moi les os, s'il le faut
C'est le temps des grandes métamorphoses

斧(おの)で私のお尻を切って
私はチョトレートを食べ過ぎた
私の肌をかじって、お願い
骨もかじって、必要ならば
大きな変身の時が来た

「私の乳房の端に尖った二つのハシバミの実を貴方はバリバリ食べる」、「私の唇の端から木イチゴの木が生えてきた それを切るためにキスして」
 という具合に、原詩はエスカレートしてゆく。

キスで私の腰を揉んで 
私はチョコレート女になる 
ヌテラの腰を溶けさせて
私に流れる血は熱いココアだ

(注 ヌテラ = ヘーゼルナッツ味のチョコレートペースト)

 

松峰綾音

 チョコレートを食べ過ぎて、いつの間にかチョコレート女になってしまった!
 どうしょう!
 どんどん太ってそれでも食べるのを止められない!

 ・・・という、ひとひねりしたチョコのCMのような、陽気な詩と音楽で、オリヴィアはひたすら楽しそうに歌っている。

 よく読むと相当エロティックで、過激な表現も随所にあり、猥雑味も孕んでいるのだが、実はこれこそが、非常にフランス的なエスプリという感じもする。

 この曲のタイトルはまさに『チョコレート女』なのだけれど、私は敢えて『チョコ娘』と付けて、もう少しあどけない、ただ能天気な、夢見る頃の底抜けの明るさを押し出したかった。

 私の訳詞の冒頭は次のようである。

食べ過ぎたの ショコラ
でも 大好き ショコラ
骨を削って お願い
腹も 齧って
必ず スリムな女に変身する

 <伸びやかで健康的なエロティシズムに溢れた『チョコ娘』の物語が楽しく展開される>、そんな曲になっただろうか。

 そして、一番気に入っている私自身の訳詞のフレーズは、前述の原詩を訳した次の部分である。

抱きしめて 優しく
体中が熱く 
とろけてゆく ショコラ
血の中を チョコレートが流れる

Fin  

松峰綾音

(注 訳詞、解説について、無断転載転用を禁止します。
   取り上げたいご希望、訳詞を歌われたいご希望がある場合は、事前のご相談をお願いします。)

     
       
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松峰綾音